8.研究施設の現状と将来計画
共同利用設備を充実させ,大学等の共同利用研究者の研究支援を行うことが大学共同利用機関の主要な役目のひと つである。1975年の研究所発足当初から装置開発室と機器センターを設置し,1976年に化学試料室,1977年に 極低温センターを設置した。さらに1979年には電子計算機センターに大型計算機を導入し,1983年から極端紫外 光実験施設(U V S OR 施設)で放射光源装置が運転を開始した。これらの施設では単に設備を設置するだけではなく, 共同利用支援業務を滞りなく行うために技術職員を充実させた。また,高度な研究を進めるためには研究開発が不可 欠であり,研究職員も配置した。
流動性の高い分子科学研究所の場合,着任後の研究立ち上げスピードの速さが重要である。また,各研究グループ サイズが小さいことも補う必要がある。このような観点でも施設を充実させることが重要である。それによって,転 出後もこれらの施設の共同利用によって研究のアクティビティを維持することが可能である。研究者が開発した優れ た装置が転出後,共同利用設備として施設の管理となって,さらに広く共同利用されるケースもある。このように, 研究所として見た場合,施設の充実は研究職員が流動していくシステムそのものを支援することになる。従って,施 設の継続的な運営が重要であり,毎年,所全体に定員削減,人件費削減の要請があっても施設の技術職員については 手を付けず技術の向上に努め,絶えず技術レベルの高い人材を確保するようにした。技術職員が研究所外に出かけそ の高い技術力で研究支援するなどの技術交流を可能とした。さらに長期戦略が必要な施設には教授を置くことで,現 在は,施設所属の研究職員であっても流動性を保てる方向になっている。
現在,極端紫外光研究施設(U V S OR 施設),計算科学研究センター(組織的には岡崎共通研究施設のひとつ)が大 型設備を有し,計画的に高度化,更新を行うことで世界的にトップクラスの共同利用を実施している。国内外の超大 型の放射光施設やスーパーコンピュータ拠点との連携を図りつつ,差別化・役割分担を行い,機動性を活かした特徴 ある共同利用が進んでいる。分子制御レーザー開発研究センター(1997年設置),分子スケールナノサイエンスセン ター(2002年設置),機器センター(2007年に旧機器センター,旧極低温センター,旧化学試料室の機能を再構築 して設置)は本来の共同利用支援業務を行う一方で,それぞれ最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点事 業,ナノテクノロジーネットワーク事業,大学連携研究設備ネットワーク事業をそれぞれ受託し,特定分野の重点的 な強化,大学等の研究を支えるシステム作りを行ってきた。また,装置開発室は高度な特殊装置・コンポーネント開 発にその高い技術力を活かすべく,研究所外からの依頼に対応することで共同利用施設としての役目を果たしている。
(大峯 巖)
8-1 極端紫外光研究施設(UV S O R )
U V S O R 施設は2003年の光源加速器高度化(低エミッタンス化,直線部増強)とそれに引き続くアンジュレータ の増設,トップアップ運転(一定ビーム強度運転)導入により,1. G eV 以下の低エネルギーシンクロトロン光源とし ては世界的にも最高水準の高性能光源となった。さらに,光源加速器で唯一建設来手つかずの装置である偏向電磁石 をビーム収束作用を持つ複合機能型に交換することで,電子ビームエミッタンスを現在の 27.nm-rad から 15.nm-rad 程 度まで下げ,さらに高輝度化を図る高度化改造計画が,2011年から2012年にかけて進行中である。この改造に合 わせて,アンジュレータ1台が増設され,周長 50.m の小型光源に合計6台ものアンジュレータが稼働することになる。
ビームラインはスクラップアンドビルトにより数を絞り込み,競争力のあるビームラインを中心に重点的に整備を 進めており,現在は12本が稼働している。このうち2本の偏光可変型アンジュレータビームラインは世界的にも最 高水準の性能を誇り,固体の光電子分光による研究に威力を発揮している。また,2本の真空封止型アンジュレータ ビームラインは気体や液体の特徴ある分光研究に利用されている。2012年に設置されるアンジュレータビームライ ンには国内では初めてとなる軟X線顕微分光装置が組み込まれ,U V S O R の高輝度特性を活かした研究が展開される 予定である。
新しい光源技術の開発として,レーザーと電子ビームを用いた光発生とその利用法に関する研究を,文部科学省の 受託研究として進めており,装置の整備が順調に進んでいる。2012年にはコヒーレントなテラヘルツ光・真空紫外 光の試験利用を開始する。
光源加速器の高度化は2012年度の改造で一段落し,その後はより高い光源安定性の実現へ向けた改良・技術開発 へ重心を移す。また,老朽化の進んでいる一部のビームラインについては,整理統合の可能性も排除せず更新・高度 化の検討を進め,段階的に実施する。
上記のように既存設備の性能を世界最高水準に維持し高度な利用研究を推進しつつ,次期計画の具体化に向けた検 討を進める。
i). 1.5–2.5GeV 級新第3世代リング ii). 1GeV 級超高輝度リング
iii). ライナックによる軟X線自由電子レーザー iv). 小型エネルギー回収型ライナック
など様々な可能性が考えられるが,需要,予算,敷地,加速器技術の進展,他施設の動向なども考慮しつつ,計画を 練り,最適なものを選択する必要がある。i ) は比較的低エネルギーで汎用性の高い高輝度光源の実現を目指すもので あり,S P ri ng -8 では十分に対応しきれない V U V軟X線領域での高輝度光源を実現することで,我が国では S P ri ng -8 以外に真に第3世代光源と呼べる光源がない状況を打破しようとするものである。i i ) は汎用性よりも光源性能をより 重視し V U V 領域での超高輝度光源を実現しようとするものである。i i i ) は高輝度ライナックによる軟X線領域でのシ ングルパス型自由電子レーザーの実現を目指すものである。リング型光源と相補的な光源となるはずである。i v ) は リング型光源の限界を打ち破る光源性能を実現し,且つ,リング型光源の汎用性も有する施設の実現を目指すもので ある。これらのうち i i i ) については,既存加速器を運用しつつ整備を進めることができる可能性があること,現在進 めているレーザーと電子ビームを用いた光発生技術を活かせる可能性があること,などの利点もあり,今後,優先的 に検討を進める。
8-2 分子スケールナノサイエンスセンター
自然科学研究機構・分子科学研究所・分子スケールナノサイエンスセンター規則第2条に,ナノセンターの設置目 的として「センターは,原子・分子レベルでの物質の構造及び機能の解明と制御,新しい機能を備えたナノ構造体の 開発及びその電子物性の解明を行い,これらが示す物理的・化学的性質を体系化した新しい科学を展開するとともに, ナノサイエンス研究に必要な研究設備の管理を行い,これらを研究所内外の研究者の利用に供し緊密な連携協力の下 で共同研究等を推進することを目的とする」との記載がある。即ち,ナノセンターは「ナノサイエンス研究を行う」 機能と,「ナノサイエンス研究に必要な研究設備の管理と共同研究の推進」という機能が要求されている。
平成19年度からは,分子研の組織改編に伴いこれまでのナノセンターの機能が(新)分子スケールナノサイエン スセンターと(新)機器センターに分かれた。ヘリウムや窒素の液化機・供給装置を含め汎用的な装置類およびそれ らの装置の責任者であった技術職員は機器センターに所属替えとなった。平成19年度から,センター長は物質分子 科学研究領域・電子構造研究部門の横山利彦教授が併任で務め,現在の専任教授・准教授は,平本昌宏教授,鈴木敏 泰准教授,永田央准教授,櫻井英博准教授の4名である。
共同研究支援に関しては,分子科学研究所が,平成19年度から文部科学省・先端研究施設共用イノベーション創 出事業の一環であるナノテクノロジー・ネットワークプロジェクトを受託しており,ナノセンターが業務としてこれ を運営している。本プロジェクトを遂行するため,併任教員を配置している。平成23年度においては,ナノ計測研 究部門に横山利彦教授,岡本裕巳教授,ナノ構造研究部門に加藤晃一教授(岡崎統合バイオサイエンスセンター), 永瀬茂教授,唯美津木准教授が併任し,ナノネットプロジェクト業務を実施している。また,920M H z. N M R での温 度可変固体プローブ開発を目的として,西村勝之准教授がナノ構造研究部門に併任している。ナノセンターが管理す る共通機器には,920MHz.NMR ,300kV分析透過電子顕微鏡,走査電子顕微鏡,集束イオンビーム加工機,クリーンルー ムがあり,クリーンルームを除いてはナノネットを通して共同利用(協力研究と施設利用)に供されている。また, UV S OR -II に設置された超伝導磁石高磁場極低温X線磁気円二色性測定装置(電子構造研究部門所有)は利用者が多く, 平成21年度から U V S OR との連携(B L 4B を一定時間ナノセンターのビームタイムとして配分)により,ナノネット を通して共通機器的に運用している。ナノネットの内容や成果に関しては 5-5 に記述する。
センター運営委員会は,センター長を委員長とし,専任教授・准教授全員,センター以外の教授・准教授若干名(併 任のセンター教員を含む)ならびに外部委員からなる。平成23年度の外部委員は,夛田博一大阪大学大学院基礎工 学研究科教授,山口芳樹理化学研究所チームリーダー,馬場嘉信名古屋大学大学院工学研究科教授,日原岳彦名古屋 工業大学大学院工学研究科准教授,神谷格豊田工業大学教授であった。超高磁場 NMR に関する現状と将来,ナノネッ トプロジェクトに関して評価や提言をいただいている。
超高磁場 N M R は平成18年度まで実施されていたナノサイエンス支援において設置された。溶液から固体試料の ナノ構造精密研究を実現する世界最高レベルの装置である。本機の機能を縦横に活用して,タンパク(中でも膜タン パク糖タンパクのような難結晶性複合タンパク),固体ナノ触媒,有機−無機複合コンポジット,C N T及びフラーレ ン類縁体の精密構造研究,海洋性巨大天然分子などのナノサイズ分子構造体の高次構造や動的挙動の精密解析などに 対して,ナノネットを通して共同利用に供されている。所内でも,岡崎統合バイオサイエンスセンターの加藤晃一教 授のグループが精力的に本装置を活用したタンパク質構造解析研究を遂行しており,さらに,岡崎統合バイオサイエ ンスセンターの桑島邦博教授のグループもパワーユーザーであり,所内外とも充実した先端利用がなされている。ま
た,安定な共同利用運用に加えて,新たに西村准教授が温度可変固体プローブを開発し,共同利用供与を始めた。さ らに,今年度から,東日本大震災復興支援の一環として,東京農工大の朝倉哲郎教授の高速 M A S プローブ開発(本 来は N I M S にて行う予定であった研究)を行っている。一方,920M H z. N M R と同じ環境で作動する予備装置として 600MHz 溶液固体 NMR 装置が機器センターにより公開されている。これにより 920MHz. NMR がさらに有効に利用で きるようになった。
高磁場 N M R 装置の追加導入も検討されている。新規導入がなされた場合に,機器センターの高磁場電子スピン共 鳴装置とともに磁気共鳴センター(仮称)として組織再編することも視野に入れている状況である。
平成19年度から実施してきたナノネット事業は平成23年度末で終了する。平成24年度予算において,文部科学 省ナノテクノロジー・プラットフォーム事業が認められ,10年間継続される予定である。今回は,ナノネットのよ うな地域連携ではなく,分野連携となり,分子科学研究所は,分子・物質合成・解析領域の代表機関として事業に主 体的に参画していく所存であり,ナノセンターがセンター機関の機能をもつことを想定している。
8-3 分子制御レーザー開発研究センター
8-3-1 経緯と現状,将来構想
分子制御レーザー開発研究センター(以後「レーザーセンター」)は,旧機器センターからの改組拡充によって平 成9年4月に設立された。以降,平成18年度までの10年間,分子位相制御レーザー開発研究部,放射光同期レーザー 開発研究部,特殊波長レーザー開発研究部の3研究部において所内課題研究及び調査研究を行う他,多数の共同利用 機器,小型貸出機器を維持管理し,利用者の便に供してきた。各研究部には助教授及び助手が各1名配置され,また セ ン タ ー 共 通 の 技 術 支 援 は 技 術 課 の 3 名 の 技 術 職 員 が 行 っ て き た。 放 射 光 同 期 レ ー ザ ー 開 発 研 究 部 は, 分 子 研 U V S O R との同期実験に向けた基礎的レーザー光学技術の開発の他,大出力紫外パルスレーザーやコヒーレントテラ ヘルツ光源の開発などの成果を挙げた。特殊波長レーザー開発研究部は,分子科学の新たな展開を可能とする波長の 可変な特殊波長(特に赤外域)レーザーの開発の他,マイクロチップレーザー光源等の開発を行い,産業界からも注 目される成果を挙げてきた。分子位相制御レーザー開発研究部は,分子制御のための時間的特性を制御したレーザー の開発と反応制御実験を目的として設置され活動を行った。
平成18年度には分子研の研究系・施設の組織改編へ向けた議論が行われたが,この中で,レーザーセンターのあり方 に強く関連する事柄は以下の2点であった。第一に,レーザーや放射光を重要な研究手段とし,光と物質との相互作用 に基づく分子科学を展開する研究領域として新たに光分子科学研究領域が設けられることになった。従来はこの研究領 域の研究が,主に分子構造,電子構造,極端紫外光科学の各研究系と,極端紫外光研究施設とレーザーセンターとに別々 に所属する研究グループによって行われてきた。しかし,この組織形態は,多くの共通した概念や方法論を基本とする 研究グループを縦割りに分断し,研究者間の情報の共有や研究活動における日常の議論を阻害する要因となっていた。 一方,レーザー光源を用いた研究グループは,17年度から始まった「エクストリーム・フォトニクス」のプログラムに より,既に当時,組織横断的なつながりを持つ機会が増えていた。そこで,この新研究領域を創設することにより,放射 光関連の研究グループとの間の壁も取り払い,本研究所における光分子科学研究をさらに活性化することを目指したの である。第二の点は機器センターの再設置であった。本研究所には以前,同センターが設置されていたが,その後,極 低温センターと化学試料室と共に廃止され,レーザーセンターと分子物質開発研究センターが設置され,後者は更に分 子スケールナノサイエンスセンターへと改組された。しかし,共通機器を一括して管理運営し,所内外の研究者の共同 利用を促進する必要が改めて認識され機器センターが再度設置されることとなった。これに伴って,レーザーセンターが 管理運営していた共通機器の大部分が機器センターに移管されることになった。
この措置により,レーザーセンターは従来の共同利用に関する業務を大幅に圧縮することができ,センターとして の活動の重点を開発研究に移すことが可能となった。そこで改組後のレーザーセンターでは,光分子科学研究領域の 研究グループと密接な連携をとりながら,分子研におけるレーザー関連光分子科学の開発研究の中心として機能する ことを重要なミッションと考えることとなった。ただし,光分子科学研究領域の研究グループとレーザーセンターの 役割の違いを認識しておく必要がある。光分子科学研究領域の各研究グループではそれぞれの興味のもとで光分子科 学の研究分野を開拓し,先端的研究を展開するのに対して,レーザーセンターのミッションは,光分子科学の先端的 研究とその将来的な発展に必要な,光源を含む装置,方法論の開発,及びそれらの技術の蓄積に重点がおかれるべき である。光分子科学研究領域とレーザーセンターのインタープレイにより生まれた技術や方法論を蓄積するだけでは なく,開発された手法,装置や部品を所内外に提供・共同利用に供する点で,研究領域における各グループの研究活 動との差が存在する。
ただし,技術や方法論の開発段階においては,各グループの研究活動とレーザーセンターの活動を明瞭に区別する
ことは,しばしば困難である。従って,レーザーセンターと研究グループの人的な相互乗り入れは不可欠であり,平 成19年度の組織再編に際しては,光分子科学研究領域及び UV S OR に属する数名の教授・准教授がレーザーセンター に併任する形で運営することとなった。このような組織で,光分子科学の新分野を切り拓くための装置,方法論の開 発と技術蓄積を行なう開発研究施設という位置づけで,レーザーセンターを運営している。開発された装置や方法論 の技術的蓄積も既に始まっており,今後,所内外の分子科学者との先端的な共同研究を遂行するためのリソースとし て提供することが望まれる。
これまでの所内,特にレーザーセンター内と光分子科学研究領域内における議論,及び所外委員を含むセンター運 営委員会等の席において,レーザーセンターの機能・ミッションに関しても議論を重ねてきた。そこでの意見として, 高いポテンシャルを持つ部門間の有機的な繋がりを考え,高い視点から見た共有点や一致点(例えば光による時間・ 空間を分解する研究手法)を探ること,レーザーを使って新しい実験的方法論を作って行くことが必要ではないか, という議論があった。またそれに向けて,レーザーセンターを光分子科学に関わる研究者が幅広く議論を行う場とし て有効活用することが必要との意見もあった。前者はまさに数年前の組織再編時に掲げた理想に沿うものであり,そ れに向けてレーザーセンターを議論の場として有効活用して行く必要があると考えている。エクストリーム・フォト ニクスの活動としての所内セミナーの開催時に,そのような機会を持つことを試行している。
平成23年度現在,レーザーセンターは以下の3つの研究部門より成り立っている。
(1). 先端レーザー開発研究部門;平等拓範准教授(専任),藤.貴夫准教授(専任),加藤政博教授(UV SOR より併任) (2). 超高速コヒーレント制御研究部門;大森賢治教授(光分子科学研究領域より併任)
(3). 極限精密光計測研究部門;岡本裕巳教授,大島康裕教授(以上,光分子科学研究領域より併任)
それぞれの部門の任務は,(1) テラヘルツから軟X線にいたる先端光源の開発;(2) 主に高出力超短パルスレーザーを 用いた量子制御法の開発;(3) 高空間分解および高エネルギー分解分光法の開発などである。レーザー光源の開発か ら新たなスペクトロスコピー,マイクロスコピー,制御法に至る統合的な研究手法を開発することを目的としている。 これらの開発研究により,他に類を見ない装置や方法論を創出して分子科学研究の重要な柱として寄与し,分子科学 研究所とコミュニティの新たな共同利用の機会を開拓することが求められる。また,技術職員が積極的にこれらの研 究開発に参加することによって,新たに開発された装置や方法論をセンターに蓄積し,継承していくための原動力と して活躍する事が,センターのミッションに照らして重要な点である。その意味で,現在1名しか配置されていない 技術職員ポストが増員されることが強く望まれる。
一方,先端レーザー開発研究部門への加藤教授(U V S O R 所属)の参加は,レーザーセンターと U V S O R . との連携 による新しい研究分野の創出を目指すものである。平成22年度からは実際に,レーザーセンターと U V S O R の現場 の研究者・技術職員が,レーザーと相対論的電子ビームを組み合わせたコヒーレント放射光源の開発に関して議論を 重ね,実験に取りかかっている。今後,先鋭化するレーザー光源を用いた観測制御技術と放射光を用いた研究との連 携がさらに進むことが期待され,それにより光分子科学の新たな領域を創出する正のフィードバックも加速されるで あろう。この延長線上には,将来的に,放射光とレーザーの技術を総合した大規模な新規の研究施設を建設する構想 も持っておく価値はあろう。国内外の類似の施設建設の動きを考慮すると,分子研において取り組むとすれば,レー ザーに線形加速器を組み合わせたコヒーレント光源の建設が考えられる。想定される利用実験に関する十分な議論も 尽くす必要があろう。これらの構想を含め将来的には,レーザーセンターと U V S O R . を包括した研究センターの設立 も視野に入れた検討を,行う必要があると考えている。
8-3-2 共同研究の状況
平成23年度は,下記のような共同研究とその成果があった。
1).「高出力レーザー新材料の基礎研究」
高輝度光発生を目的として,物質・材料の微細な秩序領域であるマイクロドメインをマクロな領域で構造制御する 手法の探索を行っている。コンポン研との共同研究では固体レーザーの発光中心である希土類の 4f 電子のスピンお よび軌道角運動量の磁気異方性増強効果を利用し,従来不可能とされてきた異方性レーザーセラミックスの配向制御, 及びそれを用いたレーザー発振を実証した。これにかかる研究成果は,すでに幾つか論文となっているが,近く更に 複数の論文として投稿される予定である。
2).「遠・中赤外超広帯域コヒーレント光の時間領域測定」
フィラメンテーションを使った波長変換によって,10. fs 程度の単一サイクル中赤外光パルスが発生されている。単 一サイクルパルスは,キャリア・エンベロープ位相も含めて評価することが重要である。香川大学の鶴町准教授と協 力して,テラヘルツ波を計測する手法を応用した新しい超短光パルスの評価法の開発を進めている。研究成果の一部 は国際会議で発表し,論文として投稿中である。
8-4 機器センター
機器センターは,汎用機器の維持・管理・運用と,所内外の施設利用者への技術支援を主な業務としている。この他, 研究所内外の共同利用者と協力して,機器センターの機器を利用した特色ある測定装置の開発とその共同利用も行っ ている。機器センターでは化学分析機器,構造解析機器,物性測定機器,分光計測機器,および液体窒素・ヘリウム 等の寒剤供給装置と,多様な機器の維持・管理を行っている。また,機器センター所有の多くの機器を大学連携研究 設備ネットワークに公開しつつ,この事業の実務を担当している。機器センターにはセンター長(併任)のほかに9 名の専任技術職員と2名の事務支援員が配置されている。機器センターの技術職員は,分子スケールナノサイエンス センターの保有する 920.MHz.NMR や高分解能電子顕微鏡の維持管理にも参加している。
分子研の明大寺地区では平成21〜22年度に実験棟の改修が行われ,その期間は機器センターの機器も一次的な移 動を余儀なくされていた。平成23年3月の工事終了後,その他の建物も含めて全面的な部屋割りの見直しが行われた。 機器センターでも,装置の配置を抜本的に見直し,1) 寒剤供給と物性測定機器(E S R ,S QU ID )は極低温棟,2) ナノ 秒レーザー関連はレーザーセンター棟1階,3) ピコ秒レーザーシステムは実験棟地下,4) X線回折や分光計測機器は 南実験棟,という集約化を図った。特に,南実験棟 S 101 号室には,高感度蛍光分光光度計,可視紫外分光光度計, 顕微ラマン分光装置,蛍光X線分析装置を集中して配置した。今後,さらに南実験棟には所外利用者のための待合ス ペースも整備することを計画している。
本年度は,明大寺地区のヘリウム液化装置の新規設置が行われた。平成21年に旧液化装置が修復不能の故障となっ て以来,更新作業が進行していたが,平成23年10月末に設置が完了した。これまでは山手地区の液化装置のみで明 大寺地区の供給もカバーするというぎりぎりの状態が続いてきたが,ようやくにして余裕のある供給体制が確立でき る見込みとなった。また,総合研究大学院大学からの予算措置によって,旧型の 400. M H z. NM R を新品(J E OL . J NM - S C S 400)に更新した。平成23年8月に設置が終了し,順調に稼働している。本装置導入の目的は,総研大生などの 若手研究者に最新機器を自ら利用する機会を与え,先端的研究を主体的に進める一助とすることである。今後,この 方向で有効に活用されることを期待したい。さらに,設備の老朽化への対応や既設装置の高度化への要求などによっ て,できるだけ速やかな更新・導入が望まれていた機器類を,所長よりの特別な予算的措置によって年度末までに納 入できる見込みとなった。この主なものとしては,有機微量元素分析装置,S Q U I D 極低磁場オプション,E S R . C W - E ND OR オプションがある。
機器センターは,共同利用として前期・後期に分けて年二回の施設利用を受け付けている。平成23年度の所外施 設利用件数は平成24年1月末現在で 77 件である(平成22年度は 60 件)。所外施設利用者には半期に一件あたり2 泊3日の旅費を1回支給しているが,1回で目的が達成されるような実験は非常に少ない。そのため,自費で分子研 に来所する施設利用者が多い。このような施設利用の統計を昨年に引き続き「機器センターたより No..4」に掲載した。 また,施設利用者から報告された論文タイトルや雑誌名等の情報も同様に掲載している。
次年度からは,前述の 920. M H z. N M R や高分解能分析電子顕微鏡に加えて,X線光電子分光器,集束イオンビーム 加工装置,走査型電子顕微鏡,の計5装置が,機器センターに移管されることとなった。これらの機器は,ナノテク ノロジー・ネットワークプロジェクトによって導入・運営されてきたものであるが,当プロジェクトが本年度で一旦 終了することを受けて移管されるものである。この措置は,研究所全体として大規模装置を効率的に運用するという 観点から,比較的汎用性の高い装置群を集中的かつ経常的に管理する体制の構築を目指したものであり,機器センター がその任にあたるべき施設と位置付けられたことによる。このような状況に対応して,研究所外のコミュニティの方々 から広くご意見を頂く必要性がますます増加するものと考えられる。そこで,機器センターの運営委員会が現在まで
は所内委員のみで構成されていたものを,所外委員も含めた構成に変更することとした。運営委員会規則の施行も行 われており,次年度から新体制で運営に関する議論を行う。当会議では,施設利用の審査を行うほか,施設利用の在 り方やセンターの将来計画について,所内外の意見を集約しつつ方向性を定める。
機器センターの今後であるが,国家全体の厳しい財務状況を考慮すると,汎用機器の配置や利用を明確な戦略のも とに進めることが不可欠となるのは言をまたない。実際,現在の所有機器の多くが10年以上前に導入されたもので 老朽化が進み,かなり高額の修理を頻繁に実施せざるを得ない状況になっている。全てを同時に更新することは予算 的な制約からほぼ不可能であり,緊急性・使用頻度を考慮して順次更新を進めるプランを策定して,分子研全体の設 備マスタープランへ組み込む必要がある。この点で,どのような機器ラインアップを維持するか再検討すべきであり, 機器の利用形態を考慮すると,次の3つのタイプに階層化することが有用と思われる。
1).比較的多数のグループ(特に研究所内)が研究を遂行していく上で不可欠な共通基盤的機器。これらの維持は,特 に人事流動の活発な分子研において各グループが類似の装置をそれぞれ新たに用意する必要がない環境作りの面 で,最重要である。所内利用者には利便性を図りつつ相応の維持費負担をお願いする必要がある。また,オペレーター として,技術職員ばかりでなく技術支援員等で対応することも検討する。一方,使用頻度や維持経費の点で負担が 大きいと判断されたものは見直しの対象とし,所内特定グループや他機関へも含めた移設などにより有効に利用し てもらうことも検討すべきである。
2).当機器センターとしての特色ある測定機器。汎用機器をベースとしつつ改良を加えることによってオリジナル性の 高いシステムを開発し,それを共同利用に供する取り組みを強化すべきである。その際,技術職員が積極的に関与 して技術力を高めることが重要である。所外の研究者の要請・提案を取り込みつつ連携して進めるとともに,所内 研究者の積極的な関与も求める。当センター内のみならず,例えば,U V S O R やレーザーセンター等と共同して取 り組むことも効果的と考えられる。所内技術職員の連携協力が技術を支えるのに不可欠である。コミュニティ全体 から提案を求める体制づくりも必要となろう。また,各種プロジェクトに適当な装置の時間貸しをすることによっ て維持費の一部を捻出するなどの工夫も必要であろう。
3).国際的な水準での先端的機器。分子科学の発展・深化を強力に推進する研究拠点としての分子研の役割を体現する 施設として,U V S O R や計算科学研究センターと同様に,機器センターも機能する必要がある。高磁場 N M R 装置 や E S R 装置は,国際的な競争力を有する先端的機器群であり,研究所全体として明確に位置付けを行い,利用・運 営体制を整備することによって,このミッションに対応すべきである。国外からの利用にも対応するため,技術職 員には国際性が求められる。2) と同様に,所外コミュニティからの要請・提案と,所内研究者の積極的関与が不可 欠である。特に,新規ユーザーの開拓は,分子科学の新領域形成へと繋がると期待されるものであり,これまで分 子研との繋がりがあまり深くはなかった研究者層・学協会との積極的な連携を模索することにも取り組む。先端的 機器は不断の性能更新が宿命であるが,全ての面でトップたることは不可能であるので,意識して差別化を行い, 分子研ならではの機器集合体を構成することに留意する。
8-5 装置開発室
装置開発室は,分子科学分野の研究者と協力し最先端の研究に必要となる装置や技術を開発すること,日常の実験 研究において必要となる装置や部品類の設計・製作に迅速に対応する,という二つの役割を担っている。製作依頼件 数は年間 300 件近くに及ぶ。新しい装置の開発では技術職員が研究者と密接に連携し,また,日常の実験研究で必要 となる工作依頼などについては,機械加工技能を持つ技術支援員が中心となり,対応している。
分子研外部からの製作・開発依頼を受け入れる「施設利用」を平成17年度より分子研の共同利用の一環として開 始し,年間 10 件程度を受け入れている。施設の活動の一部として定着してきており,今後,本格的に運用するにあたっ て,受入れ方式を見直し,分子科学の発展への寄与,装置開発室の技術力向上への寄与,装置開発室の保有する技術 の特徴を活かせること,の3点を考慮し,受入れに関する審査を行う方針である。
装置開発室は大きく機械工作を担当するメカトロニクスセクションと電子回路工作を担当するエレクトロニクスセ クションに分かれている。メカトロニクスセクションでは従来の機械加工技術の超精密化に向けた取り組みに加え, 近年では,フォトリソグラフィ,ホットエンボス加工などによる超微細加工技術の習得に取り組んでいる。エレクト ロニクスセクションでは,高速化や多機能化が進む電子回路の需要にこたえるために,プログラマブル論理回路素子 を用いたカスタム IC の開発,東京大学大規模集積システム設計教育センター(V D E C )を利用したアナログ集積回路 の開発技術の導入に取り組んでいる。
装置開発室の業務の基盤である依頼業務,すなわち,分子研内外からの装置の製作や開発の依頼に応える業務に加 えて,装置開発室職員が技術力向上を目指して自主的に研究計画を立案し遂行するような研究開発を「将来技術開発 プロジェクト」と位置付け,研究の現場における需要を意識しつつ,装置開発室で保有する技術をさらに伸ばす仕組 みとして展開していきたいと考えている。
装置開発室の設備については,創設から30年が経過し,老朽化,性能不足,精度低下などが進み,設備の更新は 急務となっている。今後,装置開発室の将来計画・将来像の検討を進めながら,その方向性を強く意識しつつ,日常 の実験研究を支えるための基盤的設備,先端技術習得のための先進設備,双方の更新・導入を進める。また,他機関 の保有する設備の利用も積極的に検討する。これまでの利用経験から,利用申請などの手続きに時間がかかるなどの 問題も明らかになってきており,効果的な利用・活用の方法を調査・検討する。
8-6 計算科学研究センター
計算科学研究センターは,2000年度の電子計算機センターから計算科学研究センターへの組織改組にともない, 従来の共同利用に加えて,理論,方法論の開発等の研究以外にも,研究の場の提供,ネットワーク業務の支援,人材 育成等の新たな業務に取り組んでいる。2011年度においても,次世代スーパーコンピュータプロジェクト支援,ネッ トワーク管理室支援等をはじめとした様々な活動を展開している。上記プロジェクトについてはそれぞれの項に詳し く,ここでは共同利用に関する活動を中心に,特に設備の運用等について記す。
2012年2月現在の共同利用サービスを行っている計算機システムの概要を示す。本システムは,「超高速分子シ ミュレータ」と「高性能分子シミュレータ」から構成されている。前者は2012年2月明大寺地区に設置され,後者 は2008年3月に更新されて山手地区に設置されている。両シミュレータは,いずれも量子化学,分子シミュレーショ ン,固体電子論などの共同利用の多様な計算要求に応えうるための汎用性があるばかりでなく,ユーザーサイドの PC クラスタでは不可能な大規模計算を実行できる性能を有する。
まず,超高速分子シミュレータは富士通社製の P R I M E R G Y と S G I 社製の U V 1000 から構成される共有メモリ型ス カラ計算機で,両サーバは同一体系の C PU(Intel. X eon)および OS (L i nux2.6)をもとに,バイナリ互換性を保って 一体的に運用される。これらに加え,京コンピュータと同じアーキテクチャの富士通社製 P R I M E H P C . F X 10 があり, システム全体として総演算性能 149. T f l ops で総メモリ容量 43. T B y te 超である。PR IM E R G Y は,16. C PU コア /64. G B 構成のノード 162 台と 16C P U コア /128G B 構成のノード 162 台からなる P C クラスタである。前者が 40. G B /s で後者 は 80. G B /s のバンド幅で演算ノード間が相互接続され,大規模な分子動力学計算などノードをまたがる並列ジョブを 高速で実行することができる。特に後者においては,v S M P を導入することで複数ノードを仮想的に 1 ノードの共有 メモリシステムとして運用できる機構を有する。UV 1000 は 576.C PU コア /9.T B を有する NUMA型の共有メモリシス テムであり,ジョブ作業領域用に実効容量 400. T B および総理論読み出し性能 12. G B /s を有する高速磁気ディスク装 置が装備され,大規模で高精度な量子化学計算を可能とする。この2サーバで 1000. T B の容量の外部磁気ディスクを 共有し,NF S より高速なパラレル NF S が使用できる。PR IME HPC . F X 10 は,16C PU コア /32G B の 96 ノードが富士通 独自の T of u インターコネクトで連結されたシステムである。京コンピュータと互換性があり、京コンピュータのプ ログラム開発やデータ解析等への活用が期待される。
一方,高性能分子シミュレータは,演算サーバ,ファイルサーバ,フロントエンドサーバおよびネットワーク装置 から構成される。演算サーバは,日立製作所製の S R 16000 であり,1. C PU コアあたり 18.8. G fl ops の演算性能を持ち, 1 ノードが 32.C PU コアと 256.GB yte メモリを有する共有メモリ型スカラ計算機である。理論総演算性能は 5.4.T flops, 総メモリ容量は 2.3. T B y te であり,一時作業領域として 23. T B y te のディスクを装備している。本演算サーバは,浮動 点少数演算量が多い分子科学計算はもちろんのこと,高クロック周波数 C PU の強みを生かし,従来性能が出しにくかっ た整数演算や論理演算を多用するプログラムにも性能を発揮する。ファイルサーバは,128.T B yte のディスクを装備し, 共同利用システム全体のホームディレクトリ等のサービスを行っている。またバックアップ領域として 60. T B y te の ディスクも装備している。2013年2月以降に「高性能分子シミュレータ」を更新するために,2011年9月に仕様 策定委員会を設置し,導入に向けた手続きを開始している。
ハードウェアに加え,利用者が分子科学の計算をすぐに始められるようにソフトウェアについても整備を行ってい る。量子化学分野においては,G aussi an. 09,G amess,M ol pro,M ol cas,T urbomol e,分子動力学分野では,A mber, NA MD ,Gromacs がインストールされている。これらを使った計算は全体の約半数を占めている。さらに,量子化学デー タベース研究会の活動を支援し,同会から提供された量子化学文献データベースをホームページから検索できるよう
にしている。これまでに合計 113,007 件のデータが収録され,世界 84 カ国から利用されている。
共同利用に関しては,2011年度は 170 の研究グループにより,総数 666 名にもおよぶ利用者がこれらのシステム を日常的に利用している。また,世界をリードする計算科学研究を本センターから発信していくことができるよう, 大規模ユーザのために施設利用Sを設定し,2011年度は5件の利用グループに従来の共同利用の枠を超えた超大規 模計算環境を提供してきた。近年,共同利用における利用者数が増加傾向にある。このことは,計算科学研究センター が分子科学分野や物性科学分野において極めて重要な役割を担っており,特色のある計算機資源とソフトウエアを提 供していることを示している。
計算科学研究センターは,国家基幹技術の一つとして位置づけられている次世代スーパーコンピュータプロジェク トにおいて,とくにナノサイエンスに関わるアプリケーション開発「ナノ統合シミュレーションソフトウェアの研究 開発」において重要な役割の一端を担っている。また,昨年度より,革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・ インフラ(H P C I)戦略プログラムが開始された。この中で,H P C I. 戦略分野2「新物質・エネルギー創成」計算物質 科学イニシアティブ(C MS I:.C omputational.Materials.S cience.Initiative)が物性科学分野,分子科学分野,材料科学分野 により構成され,. C MS I. の戦略機関の一つとして分子科学研究所が参加し戦略プログラムを推進している。HPC I 事業 の中で,計算科学研究センターは H P C I. の資源提供機関の一つとして H P C I. 戦略プログラムに参加し,昨年度よりコ ンピュータ資源の一部(20% 未満)を提供・協力している。さらに,ハード・ソフトでの協力以外にも,分野振興お よび人材育成に関して,スーパーコンピュータワークショップ「バイオサイエンスに対する計算分子科学からのアプ ローチ」と2つのウィンタースクール「第1回量子化学ウインタースクール〜基礎理論を中心として〜」と「第5回 分子シミュレーションスクール〜基礎から応用まで〜」を開催した。
平成23年度 システム構成(2012 年 2 月以降) 超高速分子シミュレータシステム
クラスタ演算サーバ
型番:富士通.PR IME R GY OS:L inux
C PUC ore 数:5184(16C PUC ore× 162 ノード × 2 システム)
総理論性能:120.2T F L OPS (371.2GF L OPS × 162 ノード × 2 システム) 総メモリ容量:31.1T B (64GB × 162 ノード+ 128GB × 162 ノード) 高速 I/O 演算サーバ
型番:S GI.UV 1000 OS:L inux C PUC ore 数:576
総理論性能:6.1T F L OPS (6.4GF L OPS /C PUC ore) 総メモリ容量:9.2T B
ディスク容量:400T B (/work)
「京」用開発サーバ
型番:富士通.PR IME HPC .F X 10 OS:L inux
C PUC ore 数:1536(16C PUC ore× 96 ノード) 総メモリ容量:3.0T B (32GB × 96 ノード) ディスク容量:48T B (/k/home)
外部磁気ディスク装置
型番:PA NA S A S .PA S 12,PA S 11 総ディスク容量:1000T B 高速ネットワーク装置
型番:F orce10.Z 9000
高性能分子シミュレータシステム 演算サーバシステム
型番:HIT A C HI.S R 16000 モデル OS:A IX
C PUC ore 数:288(32C PUC ore× 9 ノード) 総理論性能:5.4T F L OPS
総メモリ容量:2.3T B (256GB × 9 ノード) ディスク容量:23T B (/work)
ファイルサーバシステム
型番:HIT A C HI.E P8000/550Q(2 ノード) OS:A IX
総メモリ容量:64GB (32GB × 2 ノード)
ディスク容量:120T B (/home(37.4T B ),/week(20.0T B ),/save(37.4T B )) 60T B (バックアップ用)
フロントエンドサーバ
型番:HIT A C HI.E P8000/550Q(2 ノード) OS:A IX
総メモリ容量:64GB (32GB × 2 ノード) 高速ネットワーク装置
型番:A laxala.A X 6708S
8-7 岡崎統合バイオサイエンスセンター
岡崎統合バイオサイエンスセンターは,岡崎3機関(基礎生物学研究所,生理学研究所,分子科学研究所)と連携し, 新たなバイオサイエンスを切り開くことを目的として設置された岡崎共通研究施設であり,三つの研究領域(時系列 生命現象研究領域,戦略的方法論研究領域,生命環境研究領域)から構成されている。岡崎統合バイオサイエンスセ ンターに所属する専任教員は,基礎生物学研究所,生理学研究所,分子科学研究所,いずれかの研究所の教員を兼務 している。現在,分子科学研究所教員を兼務している教員は,青野重利教授,加藤晃一教授,桑島邦博教授,藤井浩 准教授,真壁幸樹助教の5名である。
岡崎統合バイオサイエンスセンターでは,平成22年度から「環境分子・生体分子応答機構研究推進事業」,「生命 機能分子から生命システムの全体像にせまる統合バイオサイエンス」の2つの研究プロジェクトを推進している。
(1) 「環境分子・生体分子応答機構研究推進事業」においては,環境分子による生理機能撹乱の本質を明らかにし, 環境分子が生物へ及ぼす影響の定量予測法の確立,環境分子による生物への悪影響の低減策確立のための科学的基 盤の確立を目的として,下記のようなサブテーマを設定して研究を実施している。
1). 環境分子の受容・応答機構研究
2). 環境分子による生理機能撹乱の統合的研究 3). 生殖細胞分化機構研究
4). 細胞のストレス応答・ストレス防御機構研究 5). 生体分子による正常生理機能制御の統合的研究 6). 環境分子の生物影響に関する統合的データベース構築
(2) 「生命機能分子から生命システムの全体像にせまる統合バイオサイエンス」においては,高次生命現象を生命機 能分子の構造的側面にまで掘り下げて理解することにより,生命システムの全体像を解き明かすことを目的として, 下記のようなサブテーマを設定して研究を実施している。
1). 生命現象の機能解析(特に神経回路網形成や視覚の解析)
2). 生命機能分子の網羅的探索(特に発生・神経回路網形成に関わる蛋白質の遺伝子レベルでの解析)
3). 生命機能分子の構造・機能解析(網羅的探索で明らかにされた蛋白質(大部分は天然変性蛋白質)のうち, 高次生命現象にとって重要なもの,および,チャネル蛋白質やセンサー蛋白質などの膜蛋白質を対象とする) 4). 高次生命システムと生命機能分子の計算機シミュレーション
5). 上記の研究を進めるための方法論・装置開発
また,平成23年度には,本事業のテーマに関連し,「生命機能分子から生命システムの全体像に迫る—環境のセ ンシングと配偶子制御」をテーマとし,主に若手研究者を対象としたサマースクールを実施した。